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碑を見に行った

雑記

町のなかにある、もう誰も住んでいない地区に行ってきた。
当然だが、その地区周辺部もかなり過疎化が進んでいる。
だから、地域全体の活性化をしなければいけないということで、調査に出かけたのだ。

その誰もいない地区には、ずっと行ってみたかった。
どうしてかというと、そこに碑があるからだ。
いろいろな事情で、この場所から人間はいなくなってしまうけど、でもここにはたしかに人間が生きていた、そのことを残す。
そんなような文章が刻まれた碑がある。
ぼくは町史を読んでそれを知って、なんともいえないような気持ちになって、個人的に見ておきたかった。

一緒に行ったのは、津和野の仲間に加えて、SFC時代の仲間ふたり。
デザイン関係を手伝ってもらうから、現地を見たうえで仕事をしてほしいと思って呼んだ。

地区に入っていくと、事前に知っていたことだけれども、いくつか廃屋があって、それに心をやられた。
人が少ない場所はぼくにとってもう真新しくはないけれど、本当に誰もいなくなった地区は初めてだった。
誰かしらが住んでいる地区の廃屋と、本当に誰もいない地区の廃屋とはだいぶ違った。

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photo by ramen

ぼくはわりかしずんずんあちこち見て回った。
なにが自分を突き動かしているのか自分でもよくわからなかった。
なんでぼくこんなに元気なんだろうねと大学時代の仲間にふと聞いたら、「ずっと退屈してるひとですからねえ」とひとこと言われた。

津和野の仲間は、宇宙人が地球のことを説明するみたいな口調でいろいろ教えてくれた。
「ここは学校だったみたいです」と言って案内してくれた場所は、うっそうと草花が茂っていた。
地面が平らで広々していることで、ここに大きな建物があったことがわかった。

平らな地面の先には細い水路があり、その水路の向こうに、ぼくが見たかった碑が立っていた。
町史で知ったときのものとはずいぶん変わっていた。
碑を覆うように草が生い茂っていたからだ。

実際に碑のところまで行って、碑文を読み上げた。
碑文そのものは、当たり前だが、町史と同じものが書いてある。
真新しいことはなかった。

必要な写真などを付近で撮影して、ほかにやることもないので、帰った。
帰りの道すがら、変な調子になって、饒舌に調査の今後の展望などいろいろなことを喋った。
そのとき喋ったことはあまりよくおぼえていない。
かつてひとがいて、いなくなった。そのことにあてられた。